2006年7月 3日 (月)

【アンチエイジング医学の理解】

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【アンチエイジング医学の理解】

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P2-3 アンチエイジング医学の理解とは〕

定義:元気で、長寿を享受することを目指す論理的・実践的科学

短くいうと、健康長寿をめざす医学

抗加齢医学で使用される医学は、ギリシャ医学の伝統的な“医学”の意。

古代ギリシャ時代時代の医学とは:健康を保持し続けるための術知であり、病者に対してははそれからの回復のための術知。

現在の医学は:「病気になってしまった状態を回復させるために特化した理論的実践的科学」の意味に使われる。

抗加齢医学の対象:予防や治療の対象となりうる。

1)      時間の経過に伴い、体内で進行する物理的な加齢のプロセスに加わる病的な諸因子であり、

2)      それによって引き起こされる病的老化現象の進行を予防し、

3)      治療することである。

百寿老人を含む超高齢者の機能的・形態的な研究から諸臓器の、バランスのよい(生理学的)老化は、それ以外の人達にみられる(病的)老化と比べて、進行が穏やかであり、一般に避け得ないと考えられてきた老化現象のかなりの部分が、病的でアンバランスな、一部が突出したよな老化現象は、その多くが、病的なものである、とうい認識が成立してきた。

積極的な予防対策や治療を行うことが望ましい。

p4-6アンチエイジング医学を理解するための老化―加齢のメカニズム〕

<エイジング(老化・加齢)とは>

1978Martinが提唱した早老症(遺伝的早期老化症候群)の考え方

種々の老化徴候の発現をもって老化を考えようという考え方が基盤。

その成果は、

1)細胞の分裂寿命と癌化の研究(テロメア代謝、p53p21、遺伝子変異、遺伝子発現変化、老廃物の蓄積、アポトーシスなど)

2)細胞間質の老化研究(コラーゲン架橋などによる細胞の微小環境の変化)

3)モデル動物の老化研究(酸化ストレスやインスリンシグナル伝達系、サイレンシング系)

4)ヒト個体の老化研究(老年病における遺伝要因と環境要因の相互作用、成長ホルモン、性ホルモンなどの量的変化など)

<統合的老化仮説>

老化機構は生物種および細胞種によって共通部分と非共通部分が存在する。

ヒトの線維芽細胞:テロメアを修復、伸長するテロメラ-ゼを十分にはもっていない。

老化機能の仮説

1) 線維芽細胞は外部の有害環境や内部で発生する酸化ストレスなどにより常に傷害を受けており、一部は死にいたる。

その結果、細胞の接触阻害が解かれて近隣の線維芽細胞の分裂をきたす。

2)細胞分裂は、非分裂期に受けた酸化ストレスによるDNA短鎖切断やテロメア問題によって、テロメアは短縮する。

3)テロメアの短縮は、DNA損傷として認識されてp53の活性化を促す。

4)      p53の活性化は、その転写因子としての機能により、他の転写因子の発現変化を巻き込んだ大規模な続発性遺伝子発現変化をきたし、細胞は分裂不能となる(p21は転写因子機能とともに細胞分裂停止機能をもつ)。

その結果、p53の下流に存在する多くの遺伝子が、老化遺伝子として機能することになる。(この中にインスリンシグナル伝達系やサイレンシング系も含まれる)

5)      大規模な遺伝子発現変化は、種々の遺伝子産物量の変化を引き起こす結果、

間質分解酵素群の発現増加は、細胞間質の減少を介して線維芽細胞のさらなる分裂をきたし、

分泌蛋白群の発現増加は、神経細胞などの非分裂細胞を含む他の細胞の機能に影響を与える。

その結果、他の細胞由来のホルモンなどの過不足も、老化徴候を引き起こす。

6)      以上の変化が互いに環境要因との相互作用を引き起こしながら、総合的にヒト個体に影響を及ぼすことによって、種々の老化徴候や老年病の発現をもたらす。

<エイジングのメカニズムからアンチエイジングへ>

老化機構仮説のどこかを修飾することがアンチエイジングへとつながることになる。

アンチエイジング・インターベンションに応用する際:生物種特異的な老化機構が存在するために、動物実験の結果は慎重に解釈。

インターベンションの方法を工夫しなければ、思わぬ副作用を生み出す結果となる。

例:p53の抑制や、種々のホルモン量の操作による発癌に危険性や抗酸化剤自体の酸化作用などが指摘。

エイジングは遺伝要因と環境要因の相互作用により修飾されるので、個々の遺伝要因と環境要因によって、オーダーメイドのインターベンションを考慮することが必要。

p7-8アンチエイジング医学の哲学〕

●加齢(エイジング:aging):生物学的加齢と物理学的加齢とがある。

抗加齢医学では、生物学的加齢をさす。

■物理学的加齢:物理的な時間が経過することによって、もともと秩序ある構造体がしだいに劣化してくることを意味する。したがって、無生物であっても、構造をもつ物体には共通して起こる現象であり、生物体を構成する分子にも一般的に起こる物理学的現象である。

■生物学的加齢:生体の中で進行する物理学的な加齢のプロセスが作り出した劣化現象が蓄積した結果、他覚的・自覚的に認められる変化が不可逆的に身体や精神の中に出現してくるプロセスである。

この結果が不可逆的に蓄積されたものが、老化(senescence)

老化現象の蓄積の程度:個人によって、また臓器によって著しい不均一性が認められている。

■物理学的加齢のプロセスが作り出す生物学的劣化現象の進行は、常に病的加速を伴っており、進行中ならこれを抑制したり防止したり治療したりして病的老化のそれ以上の進行を予防ないし停止させる余地は常に存在する。

■抗加齢医学:物理学的加齢が、生物学的加齢のプロセスの結果の不可逆的蓄積につながる過程を研究し、これを制御して、結果として老化現象の病的進行を抑制しようするもの。

■単に寿命を延長し高齢生存者のカーブの右肩を引き上げることを目的にしているのではない。

●病気を完全に排除した“理想的な状態”を指すところの“健康”ではなく、

たとえ“何がしの病気をもっていても、元気で長寿を享受できる状態”。

●何らかの病的状態が出現しても、肉体的にも、精神的にも、個人として全体的に“元気”であり、バランスのとれた状態に保たれていることが重要。

●個々の病気や臓器単位の病的変化を回復させるためにそれぞれ個別の治療手段を講じるのではなく、縦割りの隔壁をとりぞのき、個々人を身体と精神の織り成す一体のものとして全体論的(ホリスティック)に対策を考えていくことが大切。

●保険診療の枠にとらわれた医学のみならず、東洋医学や代替医療といわれてきた健康療法、食事・運動・精神療法、美容療養なども、副作用を排除しうるという条件で、幅広く研究し、既成概念にとらわれずに、適切に利用することが望ましい。

p9-10アンチエイジング医学と社会・経済構造〕

     世界保健機構(WHO)の“ワールドヘルスレポート2003

長期の病気などの不健康な期間を除いた健康寿命において日本は世界一の健康寿命国。

●人口は少子高齢化の影響により、2005年を境に年間80100万人ずつ減少していくと推定。

2026年頃:医療保険医療費は現在の約2倍の65.6兆円となり、人口全体の28.6%を占める65歳以上の高齢者の医療が、医療費全体の69%を占めると推計。

介護保険制度:給付費の増大による深刻な財政悪化に直面し、給付費支出の抑制を目標とした抜本的な改革が2005年に実施。

     21世紀に求められる医療

これまでの生命を救い、できるだけ現状復帰をさせることに主眼をおいた患者にとってマイナスの医療から、患者=医療消費者と位置づけ、患者の健康の保持、生活の質(Quality of LIFEQOL)の向上し、人間らしい生き方を全うさせるプラスの医療の実現にその主眼が置かれるだろう。

     これまどの医療消費者である患者は、公的な医療保険よりの手厚い保護を前提とした受身の体質からの脱却、自己責任を前提とした個々の健康管理が求められ、医療版ファイナンシャルプランナー、ライフプランナーと患者は各自のライフプランを設定し、元気で健康な老後(健康長寿)の実現をめざして、その各自のプランに従ったアンチエイジング、健康管理に積極的にとりくむこととなるであろう。

●患者はアンチエイジング人間ドック、および、ドクターよりのコンサルテーションを通じて、自身の老化と寿命の管理にしんけんに取り組み、通常の運動や食事療法による生活習慣の改善に加えて、自身のライフプランに基づいた、サプリメントの服用、キレーション治療、ホルモン治療等に積極的に取り組んでいくことだろう。

p11-13アンチエイジング医学の世界的潮流〕

1992年に米国抗加齢医学会(American Academy of Anti-Aging Medicine; A4M)が結成された。

200312月現在:世界65カ国11500名以上の会員が活動。

<世界の抗加齢医学会>

1993年:American Academy of Anti-Aging Medicine; A4M

2001年:日本抗加齢医学会

2002年:Asia-Pacific Conference on Anti-Aging Medicine

2003年:Anti-Aging World Conference

2004年:Middle East Anti-Aging Congress

              Latin American Congress of Anti-Aging and Aesthetic Medicine

              韓国抗加齢医学会

p14-15 加齢の疫学とアンチエイジング〕

<エイジングをめぐる個人差>

老化をめぐる集団と個人の相違がある。

年齢とともに脳室容量の平均値は増加する。

集団の平均値と個人の動向とは、かならずしも一致しない。

年をとるということは、個人差が広がっていく過程にほかならない。

<サクセスフルエイジング>

年をとっても、心身機能を保持できている(心身機能の低下が少ない)高齢者が存在する。

サクセスフルエイジング(Successful aging):

1)疾病や障害の原因となる危険因子が少ない状態

2)認知および身体運動機能を良好に保持している状態

3)人生に対して積極的に関与している状態

■サクセスフルエイジングを促進する可能性が示されている因子:

●第一に:

疾病との関連で言えば、

脳血管障害

骨関節疾患(関節炎、骨粗しょう症、骨折など)

これら疾患の原因・危険因子となる、高血圧、糖尿病、高脂血症、などのないここと。

・老化に伴う不具合(老年症候群)のないこと。

・老年症候群:運動機能低下、視力低下、聴力低下、栄養不良、うつ、記憶力低下など

●第二に

生活習慣では、非喫煙、適正体重、運動習慣。

身体運動は

高血圧、糖尿病、肥満などの予防

呼吸・循環機能・運動能力・骨密度などの維持

情緒の改善

・高齢者における運動の習慣の重要性。

・読書などの知的活動、ボランティアなどの社会的活動に従事する頻度の高い高齢者ほど、痴呆、要介護の発症リスクが低い。

     第三に

心理社会的要因では、

              ・良好な自己イメージをもつこと

良好な主観的健康度、セルフエフィカシー(自己効力感)、老いていくことに肯定的なイメージを有している。

     社会的サポートや交友関係が豊富

アンチエイジングを促進するには:

              生活習慣病対策

              高齢者における心身両面の活動レベルの維持・増加

              高齢者自身の社会参加・生きがいづくりを支援する取り組み

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