【動脈硬化とアンチエイジング医学】
・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・
【動脈硬化とアンチエイジング医学】
・・・‥‥……━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……‥‥・・・
〔P120-122 血管の構造と分布〕
<動脈の機能>
・血管壁:内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、弾性繊維、膠原線維
・基本構造:内膜intima、中膜media、外膜adventita
・ 内膜:1層の内皮細胞
・ 中膜:平滑筋細胞、弾性繊維、膠原線維
・ 外膜:線維芽細胞、弾性繊維、膠原線維
内皮細胞:生体内環境変化(血圧、高脂血症、高血糖など)の刺激で、
一酸化窒素(NO)、Prostagrandin I2 (PGI2)、Endothelin-1(ET-1)などを産生。
→ 血管を収縮・弛緩している。
PGI2やtissue type plasminogen activator (t-PA)やAnti thrombin-III (AT-III)やThrombomodulin (TM)などにより、血液凝固がおきないように調節。
病的内皮細胞には:接着因子(Vascular cell adhesion molecule-1 (VCAM-1), E-selectin)などが、発現亢進し、血液細胞(単球、リンパ球)の接着が起きる。→ 動脈硬化の初期。
接着した血球細胞は、走化性因子(monocyte chemotactic protein-1 (MCP-1)、interleukin-8 (IL-8)など)の誘導で、血管内皮間隙を侵入し、動脈硬化巣を形成。
平滑筋細胞:交感神経や生理活性物質により収縮や弛緩を起こし血管径の調節を行う。
正常血管では、平滑筋細胞は中膜に存在する。
動脈硬化病変では、中膜だけでなく内膜にもみられるようになる。
血管平滑筋細胞:増殖因子やサイトカインにより、脱分化して、中膜から内膜に遊走し動脈硬化病変の形成に関わる。
血球、内皮細胞、平滑筋細胞、細胞外基質などが複雑にネットワークを形成して、動脈は機能する。
<静脈の構造>
平滑筋細胞からなる中膜の発達が悪く、弾性に乏しい。
動脈とは違い、粥状硬化をおこしにくい。
<毛細血管の構造>
1層の内皮細胞と血管周囲の周囲細胞からなる。
管径は8-12μm。
<血管の分布>
心臓から、5L/分の血流。
安静時の血流量の多い順に、
消化器(30%)、腎臓(20%)、脳(15%)、骨格筋(15%)、皮膚(10%)、心臓(5%)、気道(5%)
〔P123-125 動脈硬化とエイジングプロセス〕
William Osler博士:人は血管とともに老いる。
血管硬化:atherosclerosis(動脈硬化)
動脈におけるatherosis(粥状硬化)とsclerosis(動脈壁の硬さ)の2つの要素をもつ。
<加齢に伴う粥状硬化>
粥状硬化:冠動脈や脳動脈など、比較的太い動脈に好発。
→ 心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤の原因となる。
・ 20歳頃
コレステロールが内皮下に蓄積、泡沫細胞とよばれるコレステリエルエステルを貯留したマクロファージの集ぞくが認められる。 → 脂肪線条(fatty streak)
(I - II型)
・ 30歳頃
泡沫細胞に加えて、細胞外脂質(粥腫、atheroma)の貯留が認められる
(III – IV型)
・ 壮年期以降
繊維性肥厚が始まる(V期)
細胞外脂質貯留(lipid core)に繊維化を伴うものをVa型(fibroatheroma)
石灰化が強いものをVb型(fibrotic lesion)
最終的に、病変は亀裂、破裂、血腫、血栓が合併し、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管疾患の原因となる(VI型)
内膜が潰瘍などで欠損したものをVia(surface defect)
血腫・出血があるものをVib(hematoma,hemorrhage)
血栓性のものをVic(thrombus)
以上の粥状硬化の進行過程は、年々進行し、冠危険因子がその進行速度を修飾する。
冠危険因子:高脂血症、糖尿病、高血圧、喫煙、冠動脈疾患の家族歴。
<加齢に伴う血管壁の硬さ(stiffness)>
血管の加齢に伴い、伸展性・弾力性が低下し、しなやかな性質を失い、硬化する。
・粥状硬化は、偏心性に発生するのに対し、血管の硬さは、全周性に進行。
・ 血管のしなやかさは中膜の弾性繊維の伸縮性が重要な役割を担う。
・ 加齢とともに、中膜の弾性繊維はエラスターゼなどで分解され、反対に細胞外マトリックスは産生増加する。
・ 慢性的にエラスチン分解と細胞外マトリックス増加の繰り返しという複雑な過程
→ 30歳ころには、中膜の弾性繊維が断裂・変性して石灰沈着する。
→ 50歳ころには、中膜平滑筋細胞は萎縮・減少し、石灰化は進行し、血管壁はさらに硬化していく。→末梢血管抵抗が高くなり、収縮期血圧の上昇、拡張期血圧の低下、脈圧の拡大を認めるようなる。
・ 加齢により弾力性がなくなり周径は徐々に拡張していく。→ 大動脈壁は、圧に対して脆弱となり、大動脈瘤や大動脈解離。
<血管硬化の予防>
・ 冠危険因子を排除すること。
冠危険因子:高脂血症、糖尿病、高血圧、喫煙、冠動脈疾患の家族歴。
高血圧、高脂血症、糖尿病などは、食事、運動などの生活習慣に影響されるため、喫煙、食事療法、運動療法で動脈硬化性疾患の予防効果が報告されている。
・ 薬剤による予防:高脂血症治療薬であるHMG CoA還元酵素阻害剤を70-85歳の高齢者に投与した大規模臨床試験(PROSPER)で、動脈硬化性疾患のイベント発生を抑制した。
・ 高齢者に対する降圧剤による治療でも、Syst-EurやSTOP-Hypertensionといった大規模試験で有用性が示された。
〔P126-128 血管硬化の臨床的指標〕
血管硬化:内皮機能障害、内膜増殖、プラーク形成、細胞外マトリックスの増生
脈波伝播速度(pulse wave velocity; PWV) → 動脈硬化度(arterial stiffness)
<血管硬化の指標>
・ 血管伸展性や血管コンプライアンスの低下
・ 血管伸展性:vascular distensibility 単位圧(mmHg)あたりの血管内容量の増加率
・ 血管コンプライアンス:vascular compliance 圧が1mmHg上昇したときに循環のある分画に蓄えられる血液の総量。
・ 伸展性に容量を乗じたもの:コンプライアンス
→ 一般にPWV (pulse wave velocity)で表される脈波伝播速度は血管コンプライアンスに最も近い。
・ PWV法による動脈硬化度評価:弾性血管におけるPWV値が血管硬度や年齢と強く相関。
→ 2点間の脈波伝播速度により動脈硬化度を評価する方法である。
頚動脈―股動脈間PWVと生命予後との報告が数多くなされている。
測定される動脈は、大動脈と動脈という組織学的に異なった血管が混在し、体表面より体内にある血管を測定することの限界。
頚動脈―股動脈間 一番arteryの混在量を少なくできる。
上腕動脈とひ骨動脈の間の脈波伝播速度を測定する方法が開発され、5分間で動脈硬化度を測定できる。
→ 上腕動脈と大腿―ひ骨動脈が大動脈を挟んで存在するために組織学的に異なった動脈の血管硬度を測定しているので、evidenceがさほど多くない。
<血管硬度と年齢・血圧>
血管硬度と年齢が強い相関を示す。
→ 加齢による血管の線維性変化によるもの。
・ 加齢による内皮機能障害に起因したNO産生障害が年齢とPWVで測定される血管硬度との関連を生じる一因となっていることも考えられる。
・ PWVと深い関係があるといわれる高血圧。
→ 高血圧患者に有意にPWVの高値を認めた。
・ 血圧との相関、脈圧との関連が注目。
→ 血行力学的に平均血圧は全体血管抵抗と心拍出量によって規定され、一回拍出量が多いほど、心拍毎に動脈系が受け入れる血液量は多く、収縮期の圧上昇と反応性に低下する体血管抵抗により、拡張期の圧降下がみとめられる。
<血管硬度の臨床応用>
・ PWVは透析患者の予後とよく相関する。
・ PWV値が高値であればあるほど、透析患者の生存率が低下し、PWV値により生命予後を判定しうるという報告あり。
・ 降圧療法の効果判定に血管硬度は利用されうる。
・ ACE阻害薬治療や少量のα遮断薬はPWVを有意に低下させた。
・ アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆のPWV値を検討。
→ 脳血管性痴呆がアルツハイマー型痴呆に比して有意にPWV値が高値。
・ アルツハイマー型痴呆を診断するために2000cm/sec未満をカットオフ値とすると感度・特異度ともの80%の診断率を得ることができた。
・ 上腕―ひ骨動脈PWVは簡易PWV法で約5分間測定することで得られ、MRIに比べ医療費も安く抑えることができる。
〔P129-130 動脈硬化の臨床的指標〕
動脈硬化の評価:血管壁が硬くなるという機能的変化とプラークや内膜・中膜の肥厚や変性など壁構造の解剖学的変化を評価することが重要
<血圧による動脈硬化の評価>
・ 動脈壁硬化により大動脈のwindkessel機能は失われ、収縮期血圧は上昇し、拡張期血圧は低下する。
・ 脈圧増大は、動脈硬化、特に伸展性障害の重要な所見。
・60歳代から収縮期血圧は上昇する一方で、拡張期血圧は低下する。
・脈圧が65mmHgを超えると要注意。
・脈圧が10mmHg上昇するごとに心血管疾患による死亡率が7%増加する。
・ 足関節血圧/上腕動脈比 (ankle-brachial index; ABI)も動脈硬化の重要な指標。
・ ASOは、ABI<0.9により診断される。
<動脈の機能的検査法>
● 内皮機能検査法
・血管内皮細胞の機能:血管拡張物質の放出により血管とーヌスの調節。
・前腕部分を5分間駆血して前後の血管径や血流を評価する方法を用いて計測。
・動脈硬化の最も初期の変化が内皮障害であるが、検査が煩雑で再現性に問題がある。
● 脈波速度(pulse wave velocity; PWV)
・ 脈波はその管が硬ければ硬いほど、内腔が細ければ細いほど、その管の壁が厚いほど遠く伝播する(Moens-Korteweg式) → PWV
・ PWV計測
頚動脈と大腿動脈の脈波によるCarotid-Femoral (cfPWV)法
上腕と足首の脈波によるBrachial-ankle (baPWV)法
・ baPWVは再現性が高く、血圧測定カフを用いており、PWVと同時に四肢血圧測定およびABI測定できる利点がある。
・ PWV:心筋梗塞、脳血管障害、末梢動脈疾患など臓器障害を発病した群で有意に高値である。
・ 糖尿病とPWVについて、重症化するほどPWVが高値であり、合併症の重症度とPWV値が相関する。
・ 大動脈や冠動脈の石灰化、頚動脈内中膜壁厚(IMT)、眼底所見、などで動脈硬化所見の強い患者ほど、PWVが速いことも報告されている。
・ PWVは動脈硬化に関連する予後予測にも有用で、本態性項血圧患者や末期腎不全患者の死亡を予知する独立した危険因子であることも実証された。
● 動脈波波形解析
・ 心拍出により生じた脈波は動脈内を末梢へと伝播して、動脈分岐部では反射波が形成。
・ 反射波は逆行性に上行大動脈へと戻り、大動脈波形を変える。
・ 動脈硬化の進行に伴う脈波速度亢進:反射波を早期に大動脈へ到達させる。
・ 反射波は、若年者は拡張期、高齢者では収縮期に到着。
・ 反射波におり収縮期血圧が増強(augument)される。
・ augumentation index (AI):動脈硬化の一つの指標。
・ AIの増加:左室後負荷の増加と拡張期圧低下による冠灌流低下をもたらし、心機能を悪化
・ AIは加齢に伴い増加し、左室肥大、頚動脈肥厚、動脈硬化性臓器障害の程度に相関。
・ PWV亢進がAI増加の原因の一つ。
・ 反射ポイントまでの距離(身長や計測部位)、反射効率などに影響を受ける。
・ 橈骨動脈などの末梢動脈のAIは中枢動脈とは異なっており、伝達関数補正などを導入しても、その問題点は、解決されない。
● 画像による評価
・ 頚動脈などの表在の比較的太い血管の超音波法による評価。
・ 径食道エコーを用いれば、大動脈の評価も可能である。
・ Mモードを利用すれば、圧変化に対する径変化(コンプライアンス)の評価も可能である。
・ X線写真は石灰化の検出に優れている。
・ CT検査は壁石灰化の検出能力がよく、冠動脈や大動脈の石灰化の評価に応用される。
・ マルチスライスCT(MSCT)やMRアンギオグラフィー(MRA)は、空間、時間分解能に優れて、3次元解析の可能で、冠動脈の画像化を可能とし、プラーク性状の評価も可能。
● 頚動脈内膜中膜複合体壁厚(intima-media thickness; IMT)
・ 頚動脈の内膜と中膜をあわせた厚さ(IMT)が指標。
・ 正常では、1mmを超えることはない。
・ 超音波による頚動脈IMTやプラークの有無は、冠動脈硬化と強い相関があること、心血管イベントの予測因子になることが実証。
● おえありに
・ 動脈硬化指標が臨床的に有用であるためには、
・ 再現性がある
・ 簡便、かつ、非侵襲的で、普遍化が可能
・ 機序の説明が可能
・ 疾患特異性がある
・ リスク是正により予後の改善がはかれる
・ 経済性に優れる。
PWVと頚動脈IMTは、これらの条件を満たす。
〔P131-133 抗加齢医学ならではの動脈硬化の危険因子〕
<動脈硬化の伸展>
動脈硬化:血管内皮細胞における慢性的な炎症性の増殖性病変。
血管内皮細胞は血管壁を構成する4種類の細胞群のひとつ
1)血管内皮細胞
2)血管平滑筋細胞
3)線維芽細胞
4)細胞外マトリックス
・ 血中にコレステロールが増加すると、活性酸素の影響などにより血管壁で酸化low-density lipoprotein (LDL)や糖化LDLに変化する。
・ 変性LDLは血管内皮細胞表面にVCAM-1やmonocyte chemotactic protein-1 (MCP-1)を発現させる。
・ VCAM-1:T細胞、単球の接着、に関わる
・ MCP-1:単球の遊走、に関わる
・ 炎症過程で生じたinterferon-γ(IFN-γ):ケモカイン(inducible protein of 10kDa; IP-10など)を発現させ、リンパ球を遊走させる。
・ 単球は活性化され、マクロファージとなりスカベンジャー受容体を発現し、変性脂質を取り込み、泡沫細胞となる。
・ 集まったTリンパ球:炎症性サイトカインやCD40Lを産生することで、マクロファージ、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞を活性化し、活性化したこれらの細胞が増殖因子やIL-1, IL-6, IL-18, TNF-α、細胞外マトリックスなどを分泌し、動脈硬化症病変が進展。
・ 分泌因子のなかにPDGFなどがあり、Kruppel-like factor-5 (KLF-5, 転写因子の一つ)を介し、血管平滑筋の分泌型から増殖型への形質転換を進める。
・ 以上の過程に、血小板、凝固因子が加わり、粥腫形成(プラーク形成)にいたる。
・ 血中に存在する血管内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell; EPC)が多いと、血管の機能が保たれ、EPCが失われると炎症性変化を介した動脈硬化が進展。
「冠動脈病変を中心とした動脈硬化の危険因子(リスクファクター)」
● フラミンガムリスクファクター
加齢
総コレステロール(LDLコレステロール)
喫煙
HDL低値
収縮期高血圧
左室肥大
● 冠動脈疾患と同等のリスクファクター
糖尿病
症状を有する頚動脈病変
末梢血管病変
● 体質関連の里樟
冠動脈疾患の家族歴
メタボリック症候群(インスリン抵抗性)
肥満
身体的不活動
社会・心理的要因
人種
● コンディション的危険因子
炎症性指標(高感度CRPなど)
ホモシステイン高値
Lp(a)高値
Small dense LDL高値
凝固促進要因増加(PAI-1)
● 非侵襲的指標
足首/腕動脈血圧比
ヘリカルCTなどによる冠動脈石灰化
頚動脈:IMT:内膜中膜複合体厚
FMD法による血管内皮機能(flow mediated dilatation)
MRI-CTなどによるプラークの存在確認
微量アルブミン尿
● 無症候性虚血の指標
無症候性虚血の指標
運動および薬物負荷心エコー
運動および薬物負荷心臓核医学
「予防心臓病学-未病戦略」
スタートとして
身体活動増大
食習慣改善
体重コントロール
社会・心理的要因・家族歴
一次的
脂質、血圧
糖のコントロール
禁煙
二次的
アスピリン
アンギオテンシン変換酵素阻害剤
β遮断薬
リハビリテーション
<動脈硬化の危険因子と抗加齢医学>
1)破綻し、血管障害を引き起こしやすい不安定な粥腫(プラーク)の同定
2)段階的な血管障害を引き起こすのは粥腫のなかでも繊維性被膜が薄く、中心部(コア)に脂質を多く含む不安定でプラークがあることが明らかなことから、血管内視鏡や粥腫部位の温度を確認し、破綻しやすいプラークを早期にチェックすることが診断的には重要。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)


最近のコメント