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【視床下部―下垂体ホルモンとアンチエイジング医学】
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〔P63-66 視床下部―下垂体ホルモンとアンチエイジング医学〕
■ 成長ホルモン(growth hormone; GH)■
・GH分泌は、思春期から青年期に最大となり、以後加齢に伴って、低下する。
・GHは、下垂体前葉から動脈的に分泌される。
・高齢者では、脈動的GH分泌パターンのGH頂値が低下する。
・GH分泌を促進する視床下部ホルモンであるGH放出ホルモン(growth hormone releasing hormone; HG-RH)を外因性に投与した場合:高齢者では、GHの増加反応が低下している。
・GH分泌の低下に伴い、GHにその産生が依存しているインスリン様成長因子(insuline-like growth factor; IGF)-I、および、IGF結合蛋白(insulin-like growth factor-binding protein; IGFBP)-3の血中濃度が低下する。
<GH分泌低下の機序>
・ラット:下垂体におけるGH含量、GHmRNA量が加齢とともに減少する。
・ 18月齢までは、GH産生細胞の絶対数の減少は認められない。
・ 下垂体GHの合成は、視床下部から放出されるGH-RHに依存しているが、視床下部GH-RH含量、mRNA量は加齢とともに低下する。
・ 高齢者にGH-RHを頻回に投与した時、GH-RHに対するGH反応が回復する。
→ GH産生細胞のGH-RH感受性が低下しているというより、長期にわたる視床下部からのGH-RH分泌低下がGH分泌不全の要因であることを示唆している。
・ GH-RHアンタゴニストを投与したとき、高齢者では、若年者に比べ、夜間のGH分泌が抑制されやすいことが、視床下部からのGH-RH放出減少で説明できる。
・ 老齢ラット:in vivoではGH-RHに対するGH反応は減弱していたが、in vitroでは、GH-RHに対して、GHは正常に反応したという成績がある。
・ ヒト:GH-RH静脈内投与に対する血漿GH反応は加齢と共に、低下する。
→ GH分泌を抑制する視床下部ホルモンであるソマトスタチン放出が加齢に伴い亢進している可能性を示唆する。
・ラット:加齢とともに、視床下部ソマトスタチン含量、放出量が増加するという報告がある一方、mRNA量や含量は減少するという報告もあり、意見の一致をみていない。
● 老化に伴うGH分泌低下の機序:
下垂体障害というより、視床下部障害、特に、GH-RH分泌低下が大きな要因。
ソマトスタチン分泌亢進が一部関与。
視床下部GH-RH分泌低下、ソマトスタチン分泌低下の機序:詳細は不明。
→ 視床下部のGH-RHニューロンやソマトスタチンニューロンはカテコラミン、セロトニン、アセチルコリンなどを含有するニューロンの支配を受けていることより、老化に伴うこれらのニューロンの変化が一時的なのかもしれない。
<GH/IGF-I系の低下と臨床症状>
・ GHは、小児期から思春期を経て成人に至る過程で、軟骨内骨形成促進による長管骨の長軸方向への伸長、骨量増加、筋肉量の増加、性腺発育を促進する。
・ GH:身体の成長や成熟を促すホルモンにとどまらず、全身のいろいろな代謝に重要な役割を果たす代謝調節ホルモンであり、代謝面におけるGHの役割は成人になってからより大切である。
・ GHの作用:組織や細胞に対するアナボリック作用と抗インスリン作用。
アナボリック作用:肝臓、骨、筋肉、性腺その他の臓器に対する蛋白合成促進、細胞増殖促進。IGF-Iを介して発揮される。
抗インスリン作用:糖質代謝、脂質代謝においては、インスリン作用に括抗するもので、脂質代謝においては中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解し、また、糖代謝においてもいろいろな段階でインスリンに対して、括抗的に作用し、耐糖能を低下させる方向に作用。
○生体は、体脂肪の増加を防ぐ。
○ 筋肉をはじめとする多くの蛋白組織の重量や機能を保持。
○ 骨代謝、脂質代謝、糖代謝のホメオスタシスを保つ。
○ さらに腎機能、心機能、免疫機能を正常に維持している。
・ GH:健常人が感じる精神心理的な健康感を保持する上でも重要な働きを果たしている。
● 加齢に伴うGH/IGF-I系の低下に対して:ソマトポーズ(somatopause)
● ソマトポーズなると:
筋肉量が減少、筋力や運動能力が低下、体幹、特に内臓脂肪の蓄積。
内臓脂肪の蓄積 → インスリン抵抗性、糖尿病、高脂血症などの病態(内臓脂肪症候群)と密接に関連し、冠動脈疾患の高い有病率につながり成人病の発症基盤として重要。
● 内臓脂肪蓄積の機序:GH自身の脂肪分解作用の減弱に加えて、副腎皮質ホルモン代謝に関わる11β-hydroxysteroid dehydrogenase(11β-HSD)が関与。
● 11β-HSD:2種のアイソザイム
・ 11β-HSD2:腎に存在し、コルチゾルを生物学的不活性型のコルチゾンに変換。
・ 11β-HSD1:肝臓、脂肪組織に存在し、11β-HSD2とは逆にコルチゾンをコルチゾルに変換。
● 11β-HSD:皮下脂肪組織よりも、内臓脂肪組織に高発現し、そこでコルチゾル産生を促進する。
● GH欠乏状態:11β-HSD1活性が亢進する → 内臓脂肪組織でのコルチゾル過剰が内臓脂肪蓄積に拍車をかけている(Cushing症候群様変化)。
● 正常健康人では骨塩量とIGF-I値には正の相関がみられ、かつ骨粗鬆症では血中IGF-I値の有意の低下が報告。→ 老年期における骨量の減少や骨粗鬆症にもGH/IGF-I系の低下が、関与している可能性がある。
■ 性腺刺激ホルモン■
・平均寿命は延長しても、卵巣機能が短期間に廃絶する閉経(menopause)の年齢はほとんど変化していない。プログラムされた遺伝情報によって規定されている可能性が高い。
<女性における視床下部―下垂体系の加齢に伴う変化>
・視床下部―下垂体系の機能は、閉経後も比較的保たれている。
・卵巣機能低下によって、ネガティブフィードバック抑制が減弱し、視床下部におけるゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin releasing hormone; GnRH)ニューロンの神経細胞は肥大し、GnRH分泌は亢進し、特徴的なパルス状の分泌パターンを示す。
・ 下垂体からの黄体化ホルモン(luteinizing hormone; LH)、および、卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone; FSH)の分泌は、周期性は欠落し、卵巣からのネガティブフィードバック抑制の減弱により亢進する。
・ LHとFSHを比べると、卵巣からのインヒビンにより抑制調節をうけているFSHが、卵巣からのインヒビン分泌減少により、LHに先行して上昇する。
・ 閉経後のFSHレベルは閉経前の5-10倍に、LHは3-4倍程度に上昇する。
・ LH、FSHの分泌亢進も60歳以降では低下してくる。
<男性における視床下部―下垂体系の加齢に伴う変化>
・ 血中テストステロン値:生後3-5ヶ月の間、成人の約半分の値を示すが、その後は、10ng/dl以下の低値となり、思春期に夜間睡眠時のLH分泌増加に平行して、夜間の血中テストステロン値上昇が始まる。
・ 思春期後期に日中も高値となり成人値となる。
・ 血中テストステロン値は、20-30歳代でピークとなり、それ以降は漸減する。個人差が大きく、高齢者でも若年者と同程度の場合もある。
・ 加齢に伴うテストステロンの低下:精巣Leydig細胞の数の減少に加えて、human chorionic gonadotropin (HCG)負荷による血中テストステロンの反応性も加齢に伴い低下する。Leydig細胞の機能低下にも起因。
・ テストステロン分泌能低下とともに、LHは上昇する。
・ 血中インヒビン値も20歳代から90歳代まで加齢とともに低下することから、老化の指標となる。
・ FSHもインヒビンによるフィードバック抑制の減弱により加齢とともに上昇。
・ 血中インヒビンとFSHの逆相関関係は、前述の血中テストステロンとLHの逆相関関係よりも早期、中年世代にすでに認められ、より明確に現れる(FSH>LH)。
→ 加齢に伴うSertoli細胞の機能低下は、Leydig細胞の機能低下よりも早期に出現する。
<甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone; TSH)>
・ 高齢者では、血中甲状腺ホルモンのうち、総T3値および遊離T3値が、若年者に比べて10-20%低下する。
・ 血中総T4値、遊離T4値は若年者と差はないので、T3/T4比がやや低下する。
→ 末梢組織での脱ヨードによるT4からT3への変換が低下しているため。
・ 甲状腺から分泌されるホルモンは大部分がT4である。
・ 生理活性のあるT3はT4のヨードが1個はずれる(5’-deiodination)ことにより生じる。
・ 脱ヨード過程が血中T3量を決定する最も重要な要因である。
・ 高齢者ではこの脱ヨード系が低下しているために血中T3値が低下する。
・ T4に関して、老化とともに甲状腺からの分泌量は減少に傾くが、T4の代謝も落ちるために、血中T4値は変化しない。
・ 血中TSH値は、若年者に比してやや高めになるが、これは、下垂体内での脱ヨードが低下しているため。
<副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone; ACTH)>
・ 加齢に伴い、副腎アンドロゲンであるdehydroepiandrosterone sulfate (DHEA-s)が低下する。
・ 老年者における副腎アンドロゲン産生分泌の低下は、副腎アンドロゲン合成に関与の大きい17, 20-lyase活性が相対的に低下が、原因。
・ 副腎コルチゾルの合成、分泌は加齢によって大きな変化がなく、血中コルチゾル値も加齢の影響はあまり受けない。→ 下垂体からのACTH分泌にも若年者と高齢者の間で差はない。
<プロラクチン(prolactin)>
・ 加齢によるプロラクチン分泌の変化について、女性で血中プロラクチン値は、閉経前後から低下すると報告。
→ 卵巣機能低下に伴うエストロゲン低下に起因。
男性において:加齢によるプロラクチン値の変化はない。
・下垂体におけるプロラクチン産生細胞の数については、加齢による影響は受けないと報告。
<抗利尿ホルモン(anti-diuretic hormone; ADH)あるいはバゾプレシン(vasopressin)>
・ 若年健常者のADH分泌の日内リズムをみると、夜間に増加しており、睡眠時の抗利尿作用の保持に役立っている。
・ 高齢者ではこの夜間睡眠中のADH分泌増加がおこらないため、夜間の頻尿、多尿につながる。
・ 生理学的刺激や薬剤によるADH分泌は、若年者に比べて、高齢者で亢進。
・ ADH分泌に対する加齢の影響は必ずしも一致しないが、加齢による尿の濃縮力の減退や血管の圧受容器機能の減退を補強あるいは代償するために、各種刺激に対するADH分泌が亢進している。
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