【遺伝子とアンチエイジング医学】
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【遺伝子とアンチエイジング医学】
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〔P18-19 ゲノムの理解〕
A:アデニン、T:チミン、C:シトシン、G:グアニン
ヒトゲノムは文字数にして、約30億文字
遺伝子:遺伝情報のひとつ
DNA:遺伝情報を構成している物質
ゲノム:遺伝情報のすべてをまとめて
ゲノムには遺伝子として働く部分(遺伝情報を担っている部分)が15%。
それ以外85%は非遺伝子領域:
染色体/核の構造形成に関与する部位、
進化的な遺物である偽遺伝子(ジャンクDNA)、
スペーサーや親子鑑定/個人鑑定などによく用いられる繰り返し配列存在。
ヒトの遺伝子は約3-4万個ほどある。
遺伝子を構成している文字数:平均して1万~1万5千文字。
遺伝子密度:約10万文字に一つ
エキソン:アミノ酸をコードしている部位
コドン:DNA3文字(コドン)で、一つのアミノ酸を指定。
アミノ酸をコードしていない領域:非アミノ酸指定領域
その遺伝子の発現を制御している転写調節配列
イントロン
非翻訳配列から構成。
■かなりの数の遺伝子とその機能が解明され、
遺伝子による特定の疾患
生活習慣病の仕組み
個々人の疾病リスク度合い
それぞれの薬に対する感受性
精神的要因までもが説明できるようになってきた。
■テーラーメイド医療が始まりつつある。
病気を遺伝子からとらえる、
治療を遺伝子から考える、
予防を遺伝子から実践する
老化・寿命に遺伝子が深く関与していることが明らかになってきた。
■老化・寿命のしくみ
細胞レベル:染色体両端にあるテロメアDNA(TTAGGの繰り返し配列)
細胞分裂(に伴うDNAの複製時)のたびにその繰り返し配列が短くなり、一定の長さ以下になると細胞が死ぬ。両端の短くなった染色体同士が、その構造不安定性から融合してしまう。
■遺伝子レベルで老化/寿命に関わっているとされる突然変異も現在までに100個以上報告。
ホルモン系遺伝子の変異によるエネルギー代謝の異常
神経系遺伝子の変異によるエネルギー代謝の異常
活性酸素を除去する防御機構遺伝子の変異
活性酸素によって傷のついたDNAを修復するDNA修復酵素遺伝子の変異
細胞内シグナル伝達関連遺伝子の変異により細胞増殖調節機構の異常(またはアポトーシスの誘導)
ホメオスターシス関連遺伝子の変異
ヘリカーゼ遺伝子の変異による染色体不安定化(ウェルナー症候群)など
遺伝子でわれわれの体すべてがコントロールされているわけではないが、遺伝子の働きとともに、各人の生活習慣(環境要因)が上乗せされ、それを形成している。
老化/寿命に関わる遺伝子の仕組みを理解しておくことは:
食事、運動、生活習慣改善などによって積極的に老化を防いでいくための大きな情報となる。
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[P20-22 長寿関連遺伝子]
<モデル動物で明らかにされた長寿関連遺伝子>
線虫、ショウジョウバエ、酵母、マウスなどのモデル動物で寿命を制御する遺伝子が明らかにされている。
線虫の寿命は数週間、ショウジョウバエの寿命は数ヶ月で遺伝子のスクリーニングに適している。出芽酵母には分裂寿命がある。
インスリン様シグナルは種を超えて保存された寿命シグナル。
<インスリンシグナルと寿命制御>
■線虫の長寿ミュータント:耐性幼虫(daf)になりやすい表現系を示す特徴を有する。
●長寿変異体:daf-2, age-1は、インスリン様成長因子(IGF)受容体遺伝子、および、その下流シグナルのキナーゼ遺伝子に変異が発見された。
インスリン様成長因子シグナルがこれらの変異体で抑制され耐性幼虫化しやすいことが明らかにされた。
■ショウジョウバエ:InR, chicoなどのインスリンシグナル関連分子の遺伝子変異
■マウス:成長ホルモンの分泌不全のために血中IGF-I濃度が低い小人症モデルマウス(dwarf mice)が長寿の表現形を示す。
■ IGF-I受容体遺伝子は分子進化的にはインスリン受容体遺伝子と同様にdaf-2遺伝子から分子進化した相同遺伝子と考えられる。
■ 哺乳動物:インスリン様成長因子シグナルが寿命を制御している可能性が示唆。
<ミトコンドリア機能とカロリー制限>
ミトコンドリア:酸化的リン酸化反応により、酸素が消費されると同時にATPが合成。
ミトコンドリアの内膜に存在する呼吸鎖複合体I, II, III, IVで連鎖して反応が惹起されている。
呼吸鎖複合体間:反応の伝達の際に電子の伝達が行われる。
●コエンザイムQ(補酵素Q):電子伝達分子により介在。
複合体I → 複合体III、複合体II → 複合体III への電子伝達。
●チトクロームc:電子伝達分子により介在。
複合体III → 複合体IV への電子伝達。
・長寿命線虫clk-1から単離されたクロック1遺伝子はコエンザイムQ合成酵素をコードすることが判明。
・Clk-1長寿命変異体ではクロック遺伝子変異のため、酸化的リン酸化反応が抑制され、活性酸素の産生も抑制されていることが指摘された。
・ RNA干渉法を用いて酸化的リン酸化酵素の活性を抑制すると、野生型線虫も長寿になる。 → ミトコンドリアの呼吸鎖反応が抑制されると、線虫が長寿化することが確認。
■カロリー制限 → 個体寿命が長寿化されることが実験的に示された。
・ インスリンシグナルの抑制
・ ミトコンドリアにおけるエネルギー産生の抑制・活性酸素産生の抑制
↓
カロリー制限でもたらされる細胞内代謝低下と共通の生理学的作用を引き起こしていると示唆。
<酸化ストレス耐性と寿命>
●p66shcマウス:マウスではじめて個体寿命が延長すると報告。
酸化ストレスに対する耐性が特徴的である。
Shcというシグナルアダプター分子に遺伝子変異が存在するために、酸化ストレスによるシグナルが細胞に入っても、細胞死誘導されないことがストレス耐性のメカニズムと考えられている。
・ 活性酸素などによる酸化ストレス、その耐性メカニズム
→ 寿命を規定する遺伝素因であると示唆される。
●線虫ctl-1変異体:過酸化水素を分解するカタラーゼ遺伝子に変異があるために短寿命になっていることが明らかになった。
●線虫mev-1やgas-1変異体:短寿命変異体
→ミトコンドリア電子伝達系のサブユニットに変異があるために、活性酸素の産生が亢進。
■個体寿命短縮は活性酸素の産生亢進によると考えられた。
・ 長寿命ミュータントの多くで、酸化ストレスに対する抵抗性の獲得が示され、
→ 活性酸素の産生効率と防御機構のバランスが寿命制御にとってきわめて重要なコンとr-ル要因である。
<ヒトで明らかにされた長寿命関連遺伝子>
■ 百寿者の疫学調査
・長寿に遺伝素因があることが示唆。
・ ハーバード大学のパールら、米国の百寿家系における遺伝子解析から、4番染色体に長寿命遺伝子が存在することを示唆。
・ この染色体領域でハプロタイプ解析を行った結果:
→ミクロソーム・トリグリセライド・トランスポーター蛋白(MTT)をコードする遺伝子が長寿に連鎖することが報告。
この遺伝子は、low density lipoprotein (LDL)やhigh density lipoprotein (HDL)などのコレステロール代謝に関与している。
↓
ヒトでは、動脈硬化病変などに関連した遺伝子が長寿の鍵になっている可能性が示唆。
■これまでに明らかにされた長寿遺伝■
モデル動物における寿命ミュータント
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モデル ミュータント 寿命 遺伝子
線虫 age-1 延長 PI3キナーゼ
daf-2 延長 インスリン様成長因子受容体
clk-1 延長 コエンザイムQ合成酵素
ctl-1 短縮 カタラーゼ
mev-1 短縮 チトクロームbサブユニット ROS↑
gas-1 短縮 ミトコンドリア電子伝達系複合体I ROS↑
ショウジョウバエ Methuselah 延長 Gタンパク共役型受容体
InR 延長 インスリン様成長因子受容体
chico 延長 IRS-1(インスリン受容体基質)
Indy 延長 sodium carboxylate cotransporter
出芽酵母 SIR2 延長 ヒストン脱アセチル化酵素
マウス p66shc 延長 シグナル伝達アダプター分子
FIRKO 延長 インスリン受容体(脂肪細胞)
IGF-IR(+/-) 延長 IGF-I受容体
Dwarf mice 延長 GH欠損によるIGF-I低値
[P23-25 老化遺伝子]
<早老症で明らかにされた老化制御遺伝子>
・遺伝性早老症の連鎖解析 → 原因遺伝子が明らかにされ、老化のプロセスを制御していると考えられる遺伝子が明らかにされた。
・長寿ミュータントから発見された遺伝子とは異なり、そのほとんどが、DNA修復またはゲノムの安定性に関与している遺伝子。
もっとも有名な遺伝性早老症は、
■ ウェルナー症候群:
思春期以降に発症
30歳代で高齢期の老人が発症する動脈硬化症、脳卒中、骨粗鬆症、種々の癌などの老人性疾患を発症。
40-50歳代で生涯を閉じる遺伝病。
1996年に疾患家系の遺伝子解析からWRNヘリカーゼ遺伝子に変異があることが発見された。→ この遺伝子は、染色体の組み換え修復に重要な役割を果たしている。
ウェルナー症候群の患者から採取した細胞は、異常な染色体が頻繁に観察される。
■ハッチンソン・ギルフォード症候群:
出生より4倍の速度で老化が進行する。
患者は小学生の頃より骨折、関節脱臼、心筋梗塞、などの成人の病気を発症。
脳卒中などの病気で20歳くらいまでに死亡する重症の遺伝性早老症。
疾患家系の遺伝子解析から、ラミンA遺伝子の遺伝子変異が報告。
ラミンA:核膜の裏打ち蛋白質であるラミン分子のなかでも最も分子量が大きなアイソフォームをコードする遺伝子 → 核膜の構造と機能維持
患者から採取したリンパ球は、核のサイズが大きくなり、核からクロマチン構造がとびだしている像が観察される。
ゲノムを格納している核膜の役割 → どのような老化制御機構があるのか課題。
■遺伝性早老症と原因遺伝子■
早老症 原因遺伝子 遺伝子の機能
ウエルナー症候群 WRNヘリカーゼ遺伝子 組み換え修復
ハッチンソン・ギルフォード症候群 ラミンA遺伝子 核膜裏打ち蛋白質
コケイン症候群 CSA遺伝子、CSB遺伝子 転写共役型DNA修復
ブルーム症候群 BLMヘリカーゼ遺伝子 DNA修復酵素
色素性乾皮症 XP遺伝子 DNA修復酵素
毛細血管拡張性失調症 ATM遺伝子 細胞周期チュックポイント制御
ダウン症候群 第21番染色体トリソミー 原因遺伝子不明
<老化モデル動物と老化遺伝子>
■Klothoマウス:
著しい成長障害を伴い、数ヶ月で多彩な老化症状を呈する平均寿命60日の早老マウスモデル。
骨粗鬆症、動脈硬化症、肺気腫、皮膚の老化、性腺の萎縮
原因遺伝子:Klotho遺伝子は腎臓でのカルシウム代謝調節に関わっている。
遺伝子変異のためにカルシウムのホメオスタシスが維持できなくなり、
骨のカルシウム代謝異常をきたし、
骨粗鬆症を発生するメカニズムや
蛋白分解酵素であるカルパインが活性化され組織障害をもたらすメカニズムが明らかにされた。
■SAMP系列マウス:多遺伝子系の自然発症型の老化促進マウス
アミロイド症を発症する系列(P1系)
白内障を発症する系列(P9系)
学習・記憶障害を発症する系列(P8系)
テロメア:染色体の末端で、DNA構造を保護しているリピート構造。
細胞分裂とともにリピート構造が短くなり、細胞の老化を刻んでいる時計。
テロメラーゼ:RNAを鋳型にこのリピート構造を伸張している酵素
がん細胞や生殖細胞で高い酵素活性が認められている。
テロメラーゼを完全欠損したマウス:6世代継代すると、不妊になる。
この不妊マウスの生殖器官は高度に萎縮し、テロメアの長さも極端に短縮。
→ テロメアの短縮に6世代の交配が必要であると考えられた。
分裂を繰り返す細胞:しだいにテロメアが短縮し、最終的にはテロメアが損失し、
細胞分裂できなくなる。
・ テロメアの変化
分裂の激しい生殖細胞、造血細胞、創傷治癒過程での皮膚の細胞で観察される。
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■老化モデルマウスと原因遺伝子■
短寿命ミュータントマウス 老化形質 原因遺伝子の機能
Klothoマウス 骨粗鬆、全身性の多彩な老化 カルシウム代謝関連遺伝子
テロメラーゼ欠損マウス 不妊、造血障害 テロメア延長
p53変異マウス 全身臓器の退縮 遺伝子変異の検出
SAMP系マウス 促進老化、全身性変化 多遺伝子系
MnSOD欠損マウス 拡張型心筋症 活性酸素の分解
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<活性酸素と老化>
活性酸素:老人病の多くを占める動脈硬化症、パーキンソン病などの脳変性疾患、高齢者の筋肉の退行性変性で、重要な役割をはたしている。
■活性酸素種:スーパーオキシド、過酸化水素、パーオキシナイトライトなどが知られる。
●スーパーオキシド:細胞が日常的に呼吸することにより、その副産物としてミトコンドリアで発生しているスーパーオキシド。← 老化で最も重要な役割をはたしている。
● スーパーオキシドは、
スーパーオキシドディスムターゼ(superoxide dismutase; SOD)により過酸化水素に変化される。
● 過酸化水素は、
カタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼにより、水と酸素に無毒化される。
一酸化窒素(NO)と反応することにより、病理的に障害性が強いペルオキシナイトライトを産生。
活性酸素種:DNA、蛋白質、脂質膜を酸化し、酸化グアニン塩基や過酸化脂質を産生。
DNAの酸化:グアニン塩基の変異をもたらす。
↓
この点突然変異が長年にわたりゲノムに蓄積
↓
癌遺伝子や癌抑制遺伝子の病的変異をもたらす。
↓
癌の発生母地
ミトコンドリアで発生した活性酸素 → ミトコンドリア自身の遺伝子を障害する
↓
細胞のエネルギー代謝などのミトコンドリア機能が低下し、筋組織では筋力の低下などのさまざまな機能低下をもたらす。
[P26-28 動脈硬化関連遺伝子]
<多因子疾患とテーラーメイド医療>
動脈硬化性疾患:多因子疾患
遺伝子要因と非遺伝子要因が複雑な相互作用
■ 一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNPs):一般集団中にみられる遺伝子情報のバリエーションが、多因子疾患の遺伝要因の主体をなすと想定。
■ テーラーメイド医療:個々の患者の病気の状態を正確に捉えて、副作用のない、“真に有効な”治療を提供すること。
成因を含めた病気の状態に関する詳細な情報収集なども関わってくる。
アンチエイジング医学の分野でも遺伝情報にもとづく診断(21世紀の先進的医療)として期待されている。
<易罹病性診断と感受性遺伝子>
●遺伝子診断:遺伝子の変化を調べることにより、疾患ないし、特定の病態(薬物の有効性や副作用など)を診断すること。
癌、感染症、生活習慣病などの多因子疾患も対象として行われるようになった。
● 易罹病性診断:動脈硬化性疾患に対する遺伝子診断は、あくまで、リスクの高さを予測できるにすぎない。
ある発症関連遺伝子をもつことでかならずしも発症につながるわけではなく、発症危険率が上がるのみであるから、感受性遺伝子とよばれる。
● 遺伝子診断の有用性:感度、特異度、陽性適中率などの厳密な評価がなされて、はじめて、明らかとなる。→ どの遺伝子群の変化が疾患発症のリスクをどの程度高めるかという命題が解決されなければならない。
<動脈硬化性疾患の感受性遺伝子>
患者対照研究(case-control tsudy):多因子疾患の感受性遺伝子同定にむけて行われてきた。
これまで数多くの遺伝子多型と動脈硬化性疾患との関連が調べられてきた。
→ 感受性遺伝子として確定的な評価の得られたものはほとんどない。
■ アンギオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme; ACE)遺伝子座の挿入/欠失(I/D)多型と動脈硬化性疾患との関連■
血中ACE濃度の分散の30-40%が遺伝的に制御され、I/D多型によって説明できること。
1992年にCambienらは[欠失型(D)対立遺伝子をもつ者では血中ACE濃度が上昇しており、それに応じてR-A系が活性化されて発症促進へと働く]という仮説を検証。
心筋梗塞患者群610人と対照群733人でI/D多型の頻度を比較した。
D対立遺伝子の頻度は、患者群で有意に(p=0.007, 相対危険率1.57)高かったものの、その後に追試され、支持するもの、支持しないものが混在し、仮説の証明に至ってない。
<遺伝子解析における留意点>
特定の疾患の”発症しやすさ”:二元的―すなわち病気か正常かーに分類できるケースが少ない。
●虚血性心疾患:冠動脈病変の罹患枝数や狭窄率など、疾患の重症度を反映するような臨床的指標が推定できる場合、関連研究の変数として用いることもある。
動脈硬化の病態をより鋭敏に反映しうるような指標(中間的形質、例えばホモシステイン濃度)に注目し、その遺伝的規定因子が血管病変の転機(outcome)にどの程度影響するか検討する試みもある。
<新規の動脈硬化関連遺伝子>
候補遺伝子アプローチ:前述。
これに対峙するのが、
逆行遺伝学的アプローチ:まずゲノム上の位置情報に関する手がかりを得て、その後に遺伝子の絞り込みと本体の解明を目指す研究手法。
心筋梗塞におけるlymphotoxin-alpha遺伝子
脳卒中におけるphosphodiesterase 4D遺伝子
→ 未知の疾患感受性遺伝子の発見につながる可能性をもった研究手法。
■ 動脈硬化関連遺伝子と候補多型(抜粋)■
病態カテゴリー 遺伝子名 遺伝子多型 備考
動脈硬化促進因子 アンギオテンシン変換酵素 挿入/欠失(I/D)多型 レニンーアンギオテンシン系におけるkey enzyme
メチレンテトラ葉酸還元酵素 T677C ホモシステインの再メチル化に関する酵素
Gタンパクβ3サブユニット C825T 細胞膜Na+/H+交換体の機能亢進に関与
血液凝固線溶系 血小板glycoprotein Ia C807T 血小板のα2/β1因子密度や1型collagenとの接着機能と関連
血小板glycoprotein Iib Ile843Ser 血小板膜の接着蛋白受容体 GPIIb/IIIaを構成
血小板glycoprotein IIIa P1A2 血小板膜の接着蛋白受容体 GPIIb/IIIaを構成
血小板glycoprotein Ibα Kozac T/C, Val34Leu 血管障害後、内膜下での初期血小板凝集反応を促進
plasminogen-activator inhibitor 1型 4G/5G (-668) 促進系、血栓形成過程におけるkey enzyme
酸化ストレス・炎症 パラオキソナーゼ Q192R, PON1 酸化LDLの産生制御を通じて動脈硬化の病態に関与
NADPH oxidase p22 phox C242T 好中球におけるsuperoxideの産生
TNF-α -850C/T 炎症性サイトカイン
ゲノムスキャン lymphotoxin-α - ゲノムスキャンを通じて心筋梗塞の感受性遺伝子として同定
phosphodiesterase 4D - ゲノムスキャンを通じて脳卒中の感受性遺伝子として同定
[P29-31 その他の生活習慣病関連遺伝子]
<生活習慣病の感受性遺伝子>
倹約遺伝子(thrifty genotype)仮説:生活習慣病の遺伝素因
●ヒトは何万年という時間をかけて、飢餓などの厳しい自然環境に適応し生存に有利な遺伝子型を選択してきた(とくに、エネルギーを蓄積しやすい)
最近の生活習慣の急激な変容 → 運動不足、カロリー摂取過多、
倹約志向性の遺伝子型は余剰カロリーを体内に蓄積し、インスリン抵抗性を引き起こす。 → 生活習慣病の遺伝的背景となる。
● 遺伝子とヒトのつくりだした環境との不適合が、最近の罹病率の急激な増加の主因である。
■ 生活習慣の是正:食事療法、運動療法、禁煙、禁酒指導を効果的に推進し、治療、および、予防に、役立てるためには、生活習慣病の感受性遺伝子が探求されてきた。
■ 動脈硬化の危険因子:高血圧、糖尿病、肥満、を中心に遺伝子解析研究の主な知見を次に示す。
<高血圧遺伝子>
第一に:
二次性高血圧疾患:高血圧症全体のしめる割合がわずか数%
メンデル型遺伝様式をしめす高血圧性疾患が存在。
Mineralcorticoids合成経路から腎尿細管における電解質イオン交換に関わるもの。
第二に:
本態性高血圧: 1992年、Jeunemaitreら、レニンーアンギオテンシン系の主要な因子であるアンギオテンシノーゲン(angiotensinogen; AGT)について候補遺伝子解析を行い、その遺伝子多型が高血圧発症の素因であろうと報告。
その後、追試にて支持、非支持が混在。
最近の大規模関連研究やメタアナリシスの結果
→ AGT遺伝子座の寄与度は、高血圧の相対危険率を1.2~1.5倍上昇させる程度。
第三に:
モデル動物でみつかった高血圧遺伝子:
Milan高血圧ラットの感受性遺伝子として同定されたアデューシンは三量体の膜骨格蛋白であり、その遺伝子変異が腎のナトリウムイオン輸送に影響する。
Cusiら、白人集団における遺伝子解析で、αアデューシン遺伝子多型が高血圧発症の素因である可能性、とくに食塩感受性と強い相関があることを報告。
<糖尿病性遺伝子>
メンデル型遺伝様式を示す(単一遺伝子)糖尿病
インスリン受容体異常症やmaturity-onset diabetes of the youn (MODY)などにおいて、原因遺伝子が同定され、糖代謝に関する分子メカニズムの解明に貢献した。
多因子疾患としての糖尿病
有望な候補遺伝子との関連がいくつか報告。
◆糖尿病発症の若年齢化以外に、肥満、インスリン抵抗性との関連が知られている遺伝子がβアドレナリン受容体(β3-AR)
βアドレナリン受容体(β3-AR)のノックアウトマウスの実験
→ β3-AR多型を持つ場合に基礎代謝が低く(もたない人と)同程度の食事・運動では太りやすいことが示された。
◆脂肪組織の分化・増殖のマスター遺伝子であるperoxisome proliferative activated receptor, gamma (PPARγ)の多型も相対危険率1.25倍程度と弱いながら糖尿病発症と関連することが報告。
◆メキシコ系アメリカ人のゲノムスキャンにてみつかった新規の糖尿病感受性遺伝子として、カルパイン10があげられるが、すべての民族に共通した遺伝要因とはいえないようである。
<その他(高脂血症、肥満遺伝子など)>
●脂質代謝における主要因子の遺伝子異常によって生じる原発性(遺伝性)高脂血症も少なくない。
● 早発性冠動脈硬化症などを特徴とする家族性高コレステロール血症:LDL受容体の異常で生じる。→ 500種類以上の変異が報告。
■ 肥満:β3-ARやPPARγ遺伝子以外に、脂肪細胞などで分泌されるレプチン(およびレプチン受容体)が肥満遺伝子として注目。
■ レプチンとレプチン受容体の異常:数家系報告。ホモ接合体で高度の肥満を呈する。
●骨粗鬆症とビタミンD受容体遺伝子
● 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)とα1-アンチトリプシンなどプロテアーゼ・抗プロテアーゼ不均衡に関わる遺伝子。
■ 既報の生活習慣関連遺伝子と候補多型(抜粋)■
疾患名 遺伝子名 遺伝子多型 備考
高血圧 アンギオテンシノーゲン M235T レニンーアンギオテンシン系におけるレニンの基質
アンギオテン変換酵素 挿入/欠失(I/D)多型 レニンーアンギオテンシン系におけるkey enzyme
Gタンパクβ3サブユニット C825T 細胞膜Na+/H+交換体の機能亢進に関与
β2アドレナリン受容体 Arg15Gly, Gln27Glu 交感神経系の主要因子の一つ、位置的候補遺伝子
上皮型Na+イオンチャンネル ― Liddle症候群の原因遺伝子
アルドステロン合成酵素 ― 糖質コルチコイド反応性アルドステロン症の原因遺伝子
糖尿病 PPARγ Pro12Ala 脂肪組織の分化・増殖のマスター遺伝子
β3アドレナリン受容体 Trp64Arg 内臓脂肪蓄積との関連
カルパイン10 intron-3のSNP メキシコ系アメリカ人におけるゲノムスキャンを通じて同定
アミンリン Ser20Gly アジア人に特有な変異、2型糖尿病患者のラ氏島に沈着
HNF(hepatocyte nuclear factor)4α ― MODY1の原因遺伝子
グルコキナーゼ ― MODY2の原因遺伝子
高血圧・肥満 LDL受容体 ― 家族性高コレステロール血症の原因遺伝子
アポリポ蛋白E ― 家族性III型高脂血症の原因遺伝子
レプチン ― 視床下部に作用して摂食を抑制
肥満による重度の肥満家族系が存在
骨粗鬆症 ビタミンD受容体 ― 骨重量と関係する
慢性閉塞性肺疾患 α-アンチトリプシン ― 肺気腫関連遺伝子として確立
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